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EVR-323 を使用した

ヘッドホン端子付き電子アッテネータ

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EVR-323とEVR-320

 EVR -323 / 320電子アッテネータのシステム構成を第1図に示します。電子ボリュームICを搭載するアッテネータ基板、オペアンプを載せたバッファ基板、レギュレータ基板それぞれを選択して、作る人の目標とするサウンドを実現します。

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第1図 EVR -323 / 320電子アッテネータのシステム構成

 アッテネータ基板の音の差は、MUSES 72323とMUSES 72320の差そのものです。EVR-320もクリアな音を再生してくれますが、EVR-323はさらに奥底の細かいところまでさらい出すような、解像度の高さがあります。解像度が高くなれば、ヴォーカルの声質も、楽器の音色も、よりはっきりと聞こえます。

 バッファ基板は4種類、シングルオペアンプのMUSES 03を搭載したオプション03、デュアルオペアンプMUSES 01または 02を載せたオプション01と02、また、ローコスト版としてMUSES 8820を用いたオプション8820を用意しました(写真A)。

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写真A バッファ基板(上左から03, 02, 下左から01, 8820)

 ディスクリートアンプでも同じですが、回路相互の干渉を減らせば減らすほど、解像度は高く、すなわち透明な音色と、豊かな音場感を聞かせてくれます。ところが、“ふつう”のデュアルオペアンプでは、1個のチップの上に2回路が載っています。したがって、同一のサブストレートからの空乏層を介した左右回路の干渉、ボンディングワイヤを共用するための電位の干渉を、どうしても防げません。パッケージは1個でありながら、回路ごとに2個のチップとしたMUSES 01 / 02は、これらの干渉を抑え、オペアンプとは信じられないような音場感の広がりと定位感を聞かせてくれます。

 これに加え、シングルオペアンプでありながら、一つのアンプの電圧増幅系と電力増幅系の2チップ構成としたMUSES 03は、初段への大振幅系からの干渉を防ぎ、直接音と直接音の間に隠されていた間接音を自然に聞かせてくれます。

 ですから、解像力でMUSES 03に一日の長があります。デュアルですと、なめらかな高域の02か、迫力の低域の01です。

 しかし、どちらもお高い。

 そこで電子アッテネータの音をすこしばかり手軽に聞いて戴けるようにと、MUSES 8820 を搭載したオプション8820をラインナップに加えました。 MUSES 8820 は MUSES 02 譲りのしなやかな音色を聞かせてくれます。ただ、上位バージョンと比較すると、奥行きに乏しく、音像も薄っぺらに感じるのは否めません。加えて、抵抗とパスコンをコストダウンしていることも、音色を褪せさせています。それから、音には関係ありませんが、ミューティングリレー(これもお高い)を省きましたので電源オン時にはショックノイズもあります。

 しかしながらメーカー製品であれば、これが“標準”使用法でしょう。もちろんこの“標準”にて、機械式ボリュームでは再現できないクリアな音を聞かせてくれます。さらにオプション8820は、EVR-323 / 320の単なる入門バージョンではありません。オペアンプを交換し、CRを換装すれば、03 / 02 / 01のサウンドへのグレードアップが可能です。

電子アッテネータの構成

 本機では、電子ボリュームの上位版MUSES 72323に、MUSES 03オペアンプ、アドバンスド・レギュレータを用いたEVR-323-03-ACを使用しました。タカチUCケースに、EVR-323電子アッテネータと電源を入れただけの構成ですが、もちろん、電源も試聴を繰り返して決定しました。

 信号系の接続を第2図に示します。ヘッドホン端子はモニタリング用として、回路ゲインを持たせていません。バッファ基板はいずれもボルテージフォロワ接続となっていますので、左右のチャネルに抵抗を1本追加すればゲインを設定できます。ヘッドホンアンプとして使用するのでしたら+10~16 dBくらいのゲインを持たせるほうがよいでしょう。第1表に抵抗値とゲインを示します。

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第2図 信号系回路

第1表 EVR- 323 / 320バッファ基板の抵抗値とゲイン

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 EVR-323 / 320とバランス調整ユニットEVR-BALCONは、BALCON付随の8芯フラットケーブルで接続します。バランス調整といっても、ボリュームを追加するわけではありません。EVR-323 / 320に搭載された電子ボリュームICの左右のゲインを変更するだけです。ですから、バランス追加による音質劣化はまったくありません。さらにEVR-BALCONを使用すれば、リモコンコントロールも可能となります。

 EVR-323への配線は、入力はアッテネータ基板から、出力はバッファ基板から線を引き出します(写真B)。配線には協和ハーモネットUL3265 AWG24を用いています。変な音のしない線ですが、もっとよいものが入手できないですね。電線は、EVR側を先に接続して、てきとうに撚って、長さを揃えて、RCAジャックに接続します。このような低インピーダンス系では、撚っても音が変わった気はしませんが、配線は混乱しにくくなります。出力ラインは、RCAジャックとヘッドホンジャックへの線をまとめて撚って、芯線に予備ハンダしてからEVRにハンダ付けします。

 写真Bの右から2枚目がアッテネータ基板です。いちばん上のR出力の赤ワイヤー、いちばん下のL出力の黒ワイヤーがそれぞれツイストされているのが写っています。

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写真B 入出力の配線

写真左より、コントロール基板、アッテネータ基板、バッファ基板、レギュレータ基板。

アッテネータ基板から入力ラインを、写真右側のバッファ基板から出力ラインを引き出す

 入出力のRCAジャックはモガミ・ネグレックス7552です(写真C)。プラグのホット側は4方向からピンをガッチリと押さえつけ、GND側は削り出しボディによってしっかりとフィンを受け止めます。さらに7552はGND配線を、リングを介さずに直接にボディにハンダ付けできる構造です。これは効きます。ふつうのジャックに付いてくるリングを挟み込んで聞けばわかります。ガサツキ感が減ります。メッキはもちろん非磁性。メッキの良さとカッチリと加えられる接触圧が、クッキリとした音像に効いているのでしょう。

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写真C サブパネルを介してリアパネルに取り付けたモガミ・ネグレックス7552

 ヘッドホンジャックはスイッチクラフト12Bです。銀色のニッケルメッキです。粗雑な金メッキにだまされては、安っぽい音を聞かされます。「金メッキ=音がよい」と理由なく信じているような言説を目にしますが、貧相な金メッキは例外なく、弦楽器に金属質のチャラ音を付け加えます。プラグジャック(RCAも)では、良質のメッキとガッチリとした構造と強い接触圧が重要です。スイッチクラフトでも、プラスチックカバーに入ったモノ、絶縁ベーク板の薄いモノは、12Bに劣ります。音像が薄くなるというか、霞むような傾向です。

 スイッチクラフト12Bは絶縁ブッシュがありませんので、GNDがパネルに接触します。でも、それを逆手にとって、ヘッドホンジャックをケースへのワンポイントアースとします。

電源系回路

 電源系回路を第3図に示します。EVR-323には、プラスマイナスのアナログ系電源とデジタル系電源を供給します。

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第3図 電源系回路

 デジタル系電源トランスは、前述のとおり豊澄HP-510をSKEVR-VDD基板に載せました。基板には整流ダイオードとフィルタケミコンも載せます。整流ダイオードは11EQS04を用いていますが、以前に購入したモノがあったからで、30 V以上の耐圧があれば他のモノでかまいません。ケミコンも直径Φ8であれば銘柄を問いません。なお、SKEVR-VDD基板には三端子レギュレータも載せることができますが、ここでは使用しません。EVR-323 / 320のレギュレータボードに5 Vレギュレータが搭載されています。

 アナログ系電源は、当然のこととして、プラスマイナス独立電源トランスです。±電源では、中点にGND電位を設ける以上、信号の電位によってGNDでの電流方向は反転します。この電流は、レギュレータ回路を設けていても、電源トランスにまで流れます。ここでプラスとマイナス電源が同じトランスから供給されていれば、プラスの電流変化は磁気回路をとおしてマイナス側へと干渉します。同様にマイナス側もプラス側へと干渉します。この磁気回路を通した干渉は、個別の電子素子とは異なったひずみ感を付け加えます。ですから、プラスとマイナスの電源トランスを分けることによって、音場感と定位感が改善されます。実在感といってもよいでしょうか、鍵盤も管も弦も打楽器も、それぞれに音源を追いかけやすくなります。

 電源トランスには、BLOCK FL 6/15を使用しました(写真D)。2019年8月号パワーアンプで使用したFL 24 / 15より一回りサイズの小さい6 VAタイプです。BLOCK社FLシリーズは、カットコアだからというわけではありませんが、クッキリとした音を聞かせてくれます。それから、高さが低いことも、このケースに実装するためには必要条件です。

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写真D NJD7002を実装したSK-FL-small基板

左側がプラス用、右側がマイナス用の実装

 BLOCK FL 6/15はSK-FL-small基板に載せています。基板の裏面には、JRC NJD7002ショットキーバリアダイオードを用いたセンタタップ整流+逆方向ダイオード回路を組んでいます。NJD7002も、高い透明感を聞かせてくれるダイオードです。ヴォーカルの息づかいを再生します。写真Cに示すとおり、SK-FL-small基板はプラスとマイナス、それぞれの回路を構成できます。

 また、回路図(第3図)に示したとおり、片方のSK-FL-small基板には、120Ωと0.22μFを直列に接続してスパークキラーとしています。

 フィルタキャパシタは、日ケミKMH 25V 15000μFです。充実した中域感のネジ端子ケミコンです。リード端子や基板自立端子と比べてネジ端子は、電極とセパレータの振動を抑えます。と、みてきたような理由をあげますが、実験データはありませんので空想です。しかし、理由などどうでもよいのです。大切なのは試聴感です。聞き比べると、えっ!というくらい違います。ネジ端子は、クッキリとした音像を聞かせてくれます。

 ところでこのケミコン、ネジ端子を含めると70 mmを超える高さです。ふつうに立てるとケースに収まりません。そこで、横にして取り付けるためのSK-C35基板を作りました(写真E)。KMHをSK-C35基板に取り付けてから、一方向のネジ山を3.2 mmドリルで広げた8 mm角のサンハヤトSBB-002ブロックに、SK-C35をM3×4のネジを用いて取り付けます。SBB-002ブロックはM3×12のネジを用いてシャーシに固定します。

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写真E SK-C35基板を用いてシャーシに取り付けたKMHブロックコンデンサ

 なお、SK-C35基板にも、NJD7002を用いた整流回路を構成できるようにしてありますが、本機では使用しません。整流回路はSK-FL-smallとSK-C35基板のどちらで構成しても、音の差は聞こえませんでした。

 レギュレータには、配線付きのコネクタを用意しました。配線色は、+VCC:赤、アナログGND:白×2:、-VCC:青、デジタル+VDD:黄、デジタルGND:黒です。+VCCとAGND、-VCCとAGND、+VDDとDGNDラインを、それぞれを撚って配線します。

 電源スイッチは、IDECフラッシュシルエットスイッチLB6ML-A1T64WSです。AC / DC 24 VタイプのLEDなのですが、明るすぎるので、いつも半分くらいの電圧で使っていました。

 ところで、カタログ(1)に示される接続は第4図です。整流回路と電流制限抵抗が入っています。それなら直列に抵抗を入れてやれば、AC 100 Vでも使えるはずです。ちなみに、S(ブルー)の定格消費電流は16 mA。直列抵抗で88 V降下させて、半分の 8 mAを流すと考えれば11 kΩです。手持ちに11 kΩがなかったので、10 kΩをそれぞれ2並列にして、ランプ端子の両サイドで2直列となるように配線しました。合計の消費電力は約0.8 Wとなりますので、1/2 W以上の抵抗で2並列2直列にしています(写真F)。

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第4図 IDEC LBスイッチのランプ配線

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写真F LB6ML-A1T64WS(24 V)への直列抵抗配線とスイッチクラフト12Bへの配線

ケース加工

 ケースは、タカチ電機UC16-5-22DDを用いました。フロントとリアのパネル加工図を第5図に示します。

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第5図 パネル加工図

(a) フロントパネル  (b) リアパネル

 ケース加工とパネル印刷は、タカチ電機工業カスタム事業部に依頼しました(写真G)。ケース単体の4倍くらいのお値段となりますが、文字が入りますし、神経を使ってパネルに大径の円穴や角穴を空ける手間を省けます。ケースのご希望がありましたらproductsをご覧ください。

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写真G フロントとリアパネル

 シャーシ加工を第6図に示します。真鍮3 t×200×144 mmサイズです。穴はすべてM3のタップ加工をしています。シャーシは、タカチUCK-P27金具のシャーシ側のネジ山を3.2 mmドリルでつぶして、高さを合わせるためにUCK-P27とシャーシの間にM4スペーサ(0.7 t)を入れて、ケースの底板に載せた状態(間には何も挟まない)で、M3×6の皿ネジを用いて固定します。基板の取付けには5 mmのスペーサ(廣杉計器MSB-305-03E)を用いています。MSBスペーサは、ネジの長さが3 mmですので、シャーシ底面に突き出すことなく取り付けられます。

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第6図 シャーシ加工図

 フロント及びリアのパネルには、真鍮3 t×40 mmの平角棒からサブパネルを作製しました。フロント側はヘッドホンジャックの、リア側はRCAジャックの防振効果によって音のざわざわした感じを減らし、よりしっかりとした音像を聞かせてくれます。ジャックなどのパーツを軽く取り付けて位置を合わせて、パネルとサブパネルの間にアロンアルファを適当に流し込み、クランプで挟み込んで接着剤が固まるのを待ちます。

​ シャーシ全景を写真Hに示します。シャーシおよびサブパネル加工のご希望がありましたら、メールにてお問い合わせください。

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写真H シャーシ全景

 使用部品を第2表に示します。参考までに購入店と価格を示しました。価格は税込みと税抜きが混在しています。また、誤記や価格変動もあると思います。ご容赦ください。

第2表 使用部品

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組立確認

 配線を終えたら、再度接続を確認してください。テスターを用いて、各入力端子のGND、ケミコンのGND、ヘッドホン端子のGNDの導通を確認します。ケミコンの+端子とGND端子、GND端子と-端子間の抵抗を確認してください。テスターからケミコンに充電されるにつれて抵抗値が高くなれば正常です。いうまでもありませんが、アナログテスターでは黒リードを+端子につないでください。

 ACインレットの端子間抵抗を確認します。電源スイッチをOFF状態で無限大、ON状態で90 Ωくらいになるはずです。電源スイッチをON状態で、ACインレットとGNDの間の抵抗が無限大であることを確認します。

 ACコンセントを接続し、電源スイッチをONして、すぐにOFFします。ケミコン端子電圧の極性が正しいことを確認します。電源ONの間、SKEVR-VDDボードのLEDの点灯を確認します。また、EVR-323コントロールボードの緑色LEDの点灯はデジタル系電源の供給を示します。ONした瞬間にコントロールボードの黄色LEDが点滅しますが、これはコンピュータプログラムの動作を示します。スイッチ2がOFFのとき(出荷状態)は-1 dB/stepであって、黄色LEDは1回点滅します。スイッチ2をONにすると-2 dB/stepとなり、黄色LEDは2回点滅します。

 また、電源ONの間には、アッテネータ基板のLEDも点灯します。バッファボードのLEDも点灯するはずです。03は青色、01 と02は緑色です。なお、20にはLEDは取り付けていません。それぞれのLEDは、アナログ系電源の供給を示します。

 最後に、ケミコン端子でアナログ系電源電圧を確認してください。±20~22 Vの範囲にあればOKです。もしも、EVR-323を接続しない状態でアナログ電源を確認すると、AC電圧が104.4 Vを超えるとケミコン電圧が±25 VDCを超えます。無負荷テストされるときには注意してください。EVR-323を接続した状態では110 VACでも±21.8 VDCでしたので、問題ありません。

 EVR-323 / 320のコントロールボード(写真I)のスイッチ1は、最小減衰量を切り替えます。OFFのとき(出荷状態)は、-∞、-60 dB~0 dB、ONにすると-∞、-80 dB~0 dBとなります。ヘッドホンアンプとしてゲインを持たせるときに減衰量が足らなくなくなるのを防ぎます。

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写真I EVR-323 / 320 コントロールボード

特性

 第7図にひずみ特性を示します。電子アッテネータの設定は0 dBです。発振器の最大出力である9.6 Vを入れたときにも全帯域にわたって0.1 %以下、通常の入出力電圧である1~2 Vでは0.01 %以下です。きわめて良好な特性です。周波数特性図は略しましたが、100 kHzにて-0.2 dBでした。

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第7図 無負荷ひずみ特性

 透明感とか音場感とかいうのではなく、こんな響きが録音されていたんだ、と感じさせる音です。たしかにオペアンプの音も電源トランスの音も聞こえますが、余分な音がつきまとう感じがありません。どこまでもクリアで、安心して音楽に浸れます。

 ヘッドホンで聞いたときには、正直、驚きでした。ダイナミックヘッドホンで,これほどにクリアな音がするのか。ヘッドホンのドライブはMUSES 03からの出力直接となりますが、さすがに50Ω負荷を±10 Vまでスイングできるオペアンプです。不足は感じません。また、ヘッドホンをつないで/外して、パワーアンプを鳴らしましたが、音質の変化は感じません。MUSES 03の強力なドライブ段によるものでしょう。

参考資料

(1) IDEC、LBシリーズカタログ

​(掲載 ラジオ技術2021年2月号)

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