EVR-3 typeⅡ用リモコン&バランスコントロールユニットEVR-BALCONを用いた電子ボリューム
はじめに
ラジオ技術2017年5月号に発表したEVR-3 typeⅡ電子ボリュームに、左右バランス調整を加えました。これが意外と便利です。
機械式ボリュームを使っていた頃、Aカーブに加えMNカーブと2回も接点を通過させなければならないことを嫌って、左右チャネルを別々のボリュームとしていました。機械式ボリュームでの劣化は小さくありません。それを2回も通すなんて。私も若かったので許せませんでした。音量調整時には、両手を使って同時に回していました。
その後、ロータリスイッチにNS-2Bでアッテネータを組むようになりました。が、それでも左右を別々としていました。ロータリスイッチの接点は、機械式ボリュームに比べれば悪くありません。それでも2回も通したくはありませんでした。ただ、このときはステップ数を数えれば良いので、片手で操作できました。
それからEVR-3を作り、電子ボリュームとなりました。が、習慣とは恐ろしいものです。バランス調整のことは忘れ去っていました。
ところで、私の部屋の机は、部屋の右の壁にくっつけています。このためアンプを作るときも原稿を書くときも、右スピーカ寄りの音を聞いていました。まあ、いつものことですから、気にも留めていません。まじめに試聴するときだけ、2つのスピーカの中心線に移動します。
ところが考えて(思い出して?)みればMUSES 72320は、左右チャネルを別々に設定できます。ああ、そうだった、とtypeⅡに加えたのですが、使い始めると便利です。左右のスピーカから同じくらいの音量に聞こえるように調整すると、左+6 dBです。
ただし設定は左+6 dBですが、EVR-3 typeⅡは右-6 dBとなるようプログラムしています。MNカーブと同じ方法です。
この左右バランス、座ったままリモコン調整できるのがありがたい。両手で同時にボリュームを回していた頃が懐かしい。けど、もう面倒でできない。
そんなところに海神無線の久保田店長さんから、「EVR-DISP1は四角穴を開けなければならないですから大変ですよ。なんとか丸穴だけで取り付けられるようになりませんか」と言われました。それならば、とリモコン&バランスコントロールユニットEVR-BALCONを作りました(写真A)。
写真A EVR-BALCON
EVR-BALCON
EVR-BALCONは、35 mm×35 mmの基板にロータリエンコーダとリモコン受信モジュールを搭載しました。8ピンフラットケーブルでEVR-3と接続すれば動作します(写真B, C)。電源もEVR-3より供給されます。
写真B EVRとBALCONの接続(後方より)
写真C EVRとBALCONの接続(上方より)
左右バランスは、センタポジションがわからないと調整しづらいです。ところがインクリメンタリ・タイプのロータリエンコーダを使っていますので、電源オフでツマミを回されるとセンタがズレてしまいます。かといって、いちいち両方のスピーカの軸線上に移動して聴いて確認するようでは、リモコン操作の意味がありません。
そこでLEDのセンタ表示をつけました。せっかくですからフルカラーLEDを用いて左右バランスも表示します。左にあるときはグリーン、センタはブルー、右ではレッドに光らせます。飛行機の翼端灯や船舶の舷灯を前方から見たときの配色です。オーディオ的には左がホワイトで右がレッドですから、その配色にしようとも考えたのですが、単にRGBを光らせるとレッドよりホワイトが明るくなってしまいます。スイッチングさせて明るさを調整しても良いのですが、アンプの筐体内で電流スイッチングを用いたくないとの強迫観念がありますので止めました。
バランスを左に回すと一瞬グリーンに点灯して右チャネルのレベルを-1 dBし、右に回すと一瞬レッドに点灯して左チャネルを-1 dBします。また、EVR-3本体のロータリエンコーダやリモコンでボリューム操作したときにも応答を表示します。ボリュームアップではブルー、ダウンではイエローに一瞬、ミュートあるいは-∞の時には、イエローを連続点灯します。
製作
パーツリストを第1表に、回路接続を第1図に示します。ノグチトランスPM-09X02を用いたプラスマイナス独立電源トランスです。整流ダイオードにはMUSES 7001を用い、プラスマイナスそれぞれにセンタタップ整流しました。トランスより高価ですが、圧倒的な高解像度を聞かせてくれるダイオードです。MUSES 7001は専用ブロックケミコン用整流基板に載せました。これで配線がメチャ楽になります。
ブロックケミコンは、手元にあった日本ケミコンKMH35V10000μF を使いました。新規購入でしたらKMH25V15000μFでも良いでしょう。聞き比べましたが、違いは分かりません。どちらにしても、ボケッとした高域も低域も出ないかまぼこ特性のバランス感です。が、中域の充実度で選びます。
電源を配線し、EVR-3 typeⅡと入出力ジャックを配線し、EVR-BALCON付属のケーブルをつなぐと完成です。LまたはR(どちらでも良い)入力端子からはシャーシにGNDをつなぎます。
ケース内配線は協和ハーモネットUL3265-24を用いています。目立って良いところはないですが、変な響きのしない線です。入出力には、シールド線は使用しないことが音のためです。
第1表 使用部品
第1図 回路接続
第2図にフロントパネル、第3図にリアパネル加工を示します。以前にヘッドホンアンプ用として、タカチ電機工業UCSケース180×55×180ミリを特注していたものを使いました。小さくて使いよいサイズですが汎用品、たとえば5月号で使ったUC26-7-20DDの倍以上お高くつきます。フロントパネル写真はタイトルに示しましたので、写真Dにリアパネルを示します。文字入れもしてみました。
第2図 フロントパネル加工
第3図 リアパネル加工
写真D リアパネル
電源スイッチはIDEC、LB6ML-A1T64WSとしました。型番の最後のWSがブルーLEDを表します。LEDは24 V用ですが、マイナス側の電源トランスから引き出した±9 Vで光らせています。ブルーはホワイトよりも明るくなくて良好です。ブレーカはIDEC, NRF-110-1Aです。2Aでも0.5Aでも違いは聞こえませんでした。
EVR-BALCONのLEDはパネルから引っ込みますので、斜めから表示が見えません。そこで、長さ5 mmのM3用中空スペーサをフロントパネル裏面に接着しました。スペーサの内部で反射し、斜めからでもLED色がはっきり分かります。
つまみはマーブルCRD-18020-SWTとCRD-28020-SWTを使用しました。Dカット軸専用のΦ18とΦ28のつまみです。アルプス電気の通販サイト電即納で扱っています。ただしΦ18のつまみは背が低く、パネルから浮き上がりますので、ロータリエンコーダの軸に1.5 mm厚の平ワッシャーを通してからパネルに取り付け、軸を5 mmほどカットして挿入しています。LEXツマミの方がよかったと思います。
リアパネルには3ミリの真鍮プレートを重ねてRCAジャックを固定しました。これは効きます。低域がクッキリとして、立ち上がりが早くなるような感じです。ジャックはアムトランスAJ-320です。この価格帯では、しっかりとした音を聞かせてくれる端子です。
第4図にシャーシ加工を示します。3 tのアルミ板で作りました。載っているのは電源トランスだけです。EVRを右隅まで寄せていますので、シャーシのケースへの固定は3カ所となります。シャーシとケースの間には、適当に3 mmのソルボセインをカットして入れましたが、とくに効果は聞こえません。まあ、クッションで支えていると思えば、それでよし。なお、第4図には今回使用していない穴が4つありますが、それは次回のお楽しみ。写真Eにシャーシ全景を示します。
第4図 シャーシ加工
写真E シャーシ全景
音
機械式ボリュームには、特有のざらつき音が感じられます。さらに抵抗体の音もあります。高級ボリュームにすると抵抗体の音(?)は改善され、すっきりとしてくるのですが、それでも“接点の音”は聞こえます。2本の抵抗を半田付けした分圧回路と比較すれば一聴瞭然です。せっかく苦労してアンプを作っているのに…、と残念な音です。
ロータリスイッチに抵抗を半田付けしてアッテネータを作れば、機械式ボリュームとは比較にならないクリアな音になります。そしてRCAプラグやジャックを交換すると音が変わるように、ロータリスイッチによっても音は変わります。スイッチが良くなればなるほど付帯音は減り、分圧回路に近づきます。それでもスイッチ“接点の音”は残ります。
EVR-3 typeⅡには、この“接点の音”がありません。
もちろんEVR-3 typeⅡにも固有の音はあります。まず、MUSES 72320内部のアッテネータの音があります。機械式ボリュームの抵抗体と比べればひずみ感の少ないクッキリとした音ですが、NS-2Bほどの透明感はありません。さらにはMUSES 02の音もあります。MUSES 01と交換すればキャラクタはかなり変わります。そして電源、すなわち電源トランスやダイオードやケミコンによっても音は変わります。
それでも電源に注意を払えばEVR-3 typeⅡは、とくに透明感、解像度の高さ、音像の明確さにおいて “接点の音”を超えていると感じます。さらには、1個で音量も左右バランスも調整できます。そしてなによりも、リモコンが使えます。
追記
EVR-BALCON はコネクタを変更した ver.2 となり、EVR-323 / 320 シリーズでもご使用戴けます。します。真鍮シャーシについては加工を承ります。メールにてお問い合わせください。
(掲載 ラジオ技術2017年9月号)