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MUSES 03を用いたパラレル・ワールド6・パワーアンプの製作

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パラレル・ワールド5+での経験

 ラジオ技術誌2019年1月号に発表した『パラレル・ワールド5+』は、左右のチャネルにヘッドホンアンプ基板をそれぞれ2枚使用したステレオ5 Wパワーアンプです。第1図に構成を示しますが、左右の入力と出力をそれぞれつなげば(図中の点線)、ヘッドホンアンプ基板4枚をパラレルとしたモノラル・パワーアンプとなります。出力も17 Wくらいありました。「次はその構成で作ろう」というのは順序が逆で、じつはモノラル・アンプを作っている途中でよこしまな考えがおこり、ヘッドホンアンプ基板2枚ずつのステレオ・アンプに変更しました。

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​第1図 パラレル・ワールド5+の構成

 電源トランスはどちらも4個。「音質は同じで、出力だけが異なるパワーアンプ」と思って試聴したのですが・・・。期待は、ものの見事に外れました。モノラル・バージョンは、ザワザワした感じがあり、静かさが失われます。「2種のアンプの製作」として、並べて発表しようとの野望は、あっけなく崩れ去りました。

 オペアンプの並列数を増やすとにぎやかになり、さらに増やすと騒々しく細やかさに欠ける傾向が強まります。そのためMUSES 02を使用したときには最高出力を犠牲にして、オペアンプごとに電源フィルタを入れました(第2図)。この回路方式は、かのCD発売とともに現れたPhilips LHH-2000で用いられていました。

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​第2図 パラレル・ワールド4以前に用いていた電源フィルタ回路

 それでも、8または9個のMUSES 02の載った電源フィルタ付き基板であっても、基板ごとにプラス・マイナスの電源トランスを用いると、よりクリアに、音源をはっきりと感じられます。MUSES 03ヘッドホン・アンプ基板でも同じ傾向は聞こえます。音からいえば基板1枚の4パラがもっともよい、のですが、それではスピーカを鳴らせません。

「まあ、基板2枚で8パラならなんとかなるだろう」と。はい、なんとか『パラレル・ワールド5+』になりました。それを2セット並べて基板4枚の16パラでも悪くならないだろう、と考えたのは甘かった。モノラル・パワーアンプ計画は頓挫しました。

やっぱり電源トランス

 クオリティの点からは、ヘッドホンアンプ基板1枚につき、プラス・マイナスで電源トランス2個とするべきです。

 ところで、ケースはタカチUC32-8-24DDで決めてかかります。大きく重くなると、作るときは勢いでなんとかなるのですが、あとで修理になるとやっかいです。ケースに基板とトランスとケミコンを入れて、あーでもない、こーでもない、と考えましたが、基板4枚を入れるとトランスとケミコンが入りません。基板3枚構成とします。

 回路を第3図に示します。ヘッドホンアンプ基板はASC X363 を搭載するSKHP-03(SKHP-03E2に改訂)を用いました(写真A)。X363は入手困難ですので、ERO MKP1840を用いるのが良いでしょう。音的には、若干EROのほうが解像度が甘いのですが、クオリティに差はありません。容量は6.8μFでも10μFでも、音が違うようには聞こえません。

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​第3図 パラレル・ワールド6回路

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​写真A 3パラにしたヘッドホン・アンプ基板

 余談ですが、基板の厚みは2tとしています。一般的な1.6tよりもたったの25 %増しの厚みですが、音は2.5 %くらいアップします。それぞれの楽器の音色が鮮やかになります。ところが、厚みはたった25 %アップなのに、部品の取り外しは2.5倍くらいやっかいになります。写真を子細にご覧いただければ、一部の抵抗が2階建てに実装されていることがバレるでしょう。外そうとしてパターンを壊した箇所もあり、安易な対処に走りました。

 基板はもともとヘッドホンアンプ用ですので、LとRの入力、LとRの出力を接続したうえで、他の基板と並列接続します。基板あたり4パラレルの非反転アンプです。8.2Ωを通して出力を合成します。

 アンプのゲインは11倍(+20.8 dB)です。フィードバック抵抗は220Ωと2.2 kΩとしていますが、240Ωと2.4 kΩでも音の違いは感じられません。抵抗はVishay-Dale NS-2Bです。無誘導巻線特有のガッチリとした音像を聞かせてくれる抵抗です。

 MUSES 03のフィードバック抵抗には15 pFのディップマイカをパラ接続します。このCはわずかな容量ですが、高域の音色にシビアに効きます。18 pFもよいかと思いますが、さらに大きくすると、よくいえば柔らかな、悪くいえば寝ぼけた感じが強くなります。逆に小さくするほうは、12 pFもよいかと思いますが、よくいえばシャープな、悪くいえばキツい感じが強くなります。いうまでもなく、ここに積層セラミックを入れるとひずみっぽくなります。音を殺します。

 基板のうちの1枚には、入力抵抗を接続します。Vishay-Dale NS-10 10 kΩを用いました。NS-2Bよりもさらに重心の低い、かっちりとした音を聞かせてくれる抵抗です。

 また、もう1枚には33Ωと0.01μFを直列とした入力フィルタを接続します。なくても安定に動作しているのですが、パワーオフ時に一方だけをオフにすると寄生発振が観測されましたので追加しました。

 さらに、1枚の基板には、出力にゾベルフィルタとして8.2Ωと0.01μFを直列にして接続しました。これも寄生発振防止用です。入力フィルタとゾベルフィルタの抵抗のみ汎用金属皮膜抵抗としていますが、これらはNS-2Bとしても音は変わりません。CはX363しか手元になかったので、他の銘柄と比べていません。

 それぞれのヘッドホンアンプ基板は、プラスとマイナスそれぞれの電源をBLOCK FL24/15トランスから供給します。トランスはSK_FL_TRANS基板に搭載しました。基板上にはプラス・マイナスそれぞれにNJD7002ショットキーバリア・ダイオードを用いたセンタタップ整流回路を構成しています。フィルタ・キャパシタは日本ケミコンKMH 25V 15000μFです。安心のネジ端子です。電圧リミッタSK_V_Limitを用いて回路への電源電圧を±18 Vにリミットしています。

 

電圧リミッタ再考

『パラレル・ワールド5+』では、MUSES 03への電源電圧を目いっぱい高くするため電圧リミッタを開発しました(写真B)。電圧リミッタボードSK_V_Limitは、電源トランスの定電圧負荷として働き、設定電圧を超えると電流をシャントします。設定電圧を下回るときにはシャントしませんので、レギュレータなしとなります。シャントレギュレータと比べて直列抵抗を持たないだけ損失は小さく、また、トランス容量あたりのアンプ最大出力を減らすことない方式です。

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​写真B 電圧リミッタボード SK_V_limit(垂直取付状態)

 SK_V_Limitの回路を第4図に示します。プラス側で説明します。シャントレギュレータでは+VIとR1の間に直列抵抗が入りますが、SK_V_Limitではありません。トランスのレギュレーション特性を利用して電圧をリミットします。入力電圧+VIはR1とR2の分圧回路を通して、NJM1431のレファレンス端子に入力します。NJM1431は新日本無線製の高精度版431シャントレギュレータです。レファレンス端子の電圧が一定になるようにカソード電流を調整します。ここでR3に流れるカソード電流は、TR1のベース・エミッタ間電圧となります。これによってTR1のエミッタ電流、すなわちシャント電流をコントロールします。シャント電流は、TR1のコレクタからR7を通してGNDへ流します。電圧リミッタでの消費電力はシャント電流×設定電圧となるのですが、これをすべてTR1に消費させるのでは放熱がたいへんになる、と考えてR7を挿入しました。ですから、R7はなくても動作します。

 が、なぜだかわかりませんが、この抵抗がないと安っぽい音になります。よい抵抗を使うと、クッキリとした明確な音に貢献します。音質面からは省けません。R7はVishay-Dale NS10としました。消費電力より39Ωとしています。

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第4図 電圧リミッタボードSK_V_Limit回路

​ ところで、C1です。このNJM1431のアノードとレファレンスの間のキャパシタンスは、JRC NJM7400 のデータシートの回路例に示されています。NJM7400は番号こそ異なりますが、1431と同じく431シャントレギュレータです。このC1、他社を含め、他のシャントレギュレータのデータシートには示されていません。

 経験的に、電圧レファレンスによいキャパシタをパラにすると、フニャッとしていた音がはっきりとするというか、透明感が増します。データシートを見て「お、なるほど。なぜ今まで気づかなかったのだ」と試すと、まさにその傾向です。それぞれの楽器の音をよりはっきりと聞かせてくれます。

 ところが、考えてみると不思議なキャパシタです。R1とR2は、シャントレギュレータ内部のオペアンプのフィードバック抵抗です。電圧レファレンスだ、と早とちりしましたが、そうではありません。ここにC1を入れると、フィードバックの帯域制限として働きます。つまり、R1とR2の並列値とC1から構成されるカットオフ周波数より上の帯域でのフィードバックを抑制します。平たくいえば、高周波域のフィードバックの効きを下げて、レギュレータとしての動作を弱めます。

 NJM7400データシートには「C1は0.1μF。R1とR2はなるべく小さくせよ」とあります。ただ、R1とR2を小さくするのは「レファレンス電流による設定電圧の誤差を最小とするため」と説明されているだけで、周波数特性については何も述べられていません。もちろん、注意書きを無視してC1を数百倍にしてみましたが、電源オン時の立ち上がりにレギュレータの動作が遅れてオーバーシュート電圧が現れ、失敗に終わりました。2.2倍で妥協します。

 R1とR2を62 kΩと10 kΩとすれば、このときのカットオフ周波数fcは、

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​となり、可聴帯域にありますが、オペアンプのオープンループ・カットオフ周波数もこの付近ですし、気にしないことにします。まあ、オープンループ・ゲインも90 dB以上はあるでしょうから、カットオフがあったとしてもレギュレータの動作はほとんど弱まらないでしょう。

 レギュレータの応答を抑えるキャパシタを入れた方が、レギュレータICの音のキャラクタを抑えてソースの音色をよりよく再生する、ということにしておきます。なくても動作しますが、音質面からは省けません。

 

電圧リミッタの定数

 NJM1431のリファレンス電圧は、第4図のR1とR2で分圧して供給します。標準値で出力電圧VOを計算して、

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​と考えて作りましたが、VREFが最大値の2.490 Vで、IREFも最大値の4μA、抵抗の誤差が最悪の組み合わせのときの出力電圧VOを計算すると、

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​となります。MUSES 03の絶対最大定格19 Vは超えませんが、かなりギリギリです。余裕がなさ過ぎるので、回路図上はお勧め値として62 kΩと10 kΩとしています。このときの標準値は、

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​となり、最悪の場合でも、

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です。絶対最大定格に収まっています。

組立

 第1表に使用部品を示します。1台あたりの部品ですので、ステレオで二倍必要になります。

第1表 使用部品(モノラル)

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 シャーシ加工を第5図に示します。ASC X363を搭載するSKHP-03でも、ERO MKP1840を搭載するSKHP-03E基板でも、どちらでも使えるように設計してあります。シャーシは3tの真鍮板で製作しました。穴はすべてM3タップです。基板がフロントパネルに、電源トランスがリアパネル側に寄せられた上に使用していない穴がありますが、開発中の秘密兵器(?)を搭載予定です。いつになるやら。

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第5図 シャーシ加工(穴はすべてM3)

 シャーシはアルミでも可能ですが、音的には真鍮をお勧めします。ご自分で加工できないけれども製作されたい方は、メールでお問い合わせください。自作できない製作記事とはしないのがモットーです。加工費のみにて承ります。

 第6図にケース内のパーツ高さを示します。ギリギリに収めています。シャーシはUC-32-8-24ケースの下カバーに直接載せます。間に何も挟みません。UCK-P42取付金具のシャーシ側ネジを3.2 mmのドリルで拡張して、基板との間にM3の平ワッシャー(0.5t)を挟んで、金具の上からM3×5のネジで固定します。

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第6図 ケース内パーツ高さ

 電源トランス基板SK_FL_TRANSは、シャーシに10 mmのイモネジを立ててM3の3種ナットを入れてスペーサとしています(写真C)。ふつうに使う1種ナットの厚みは2.4 mmですが、3種ナットは1.8 mmです。この0.6 mmの違いが重要です。

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写真C 3種ナットとイモネジのスペーサ

 基板のハンダ面に突き出したリードは、シャーシに接触しないようギリギリでカットします。NJD7002の厚みは1 mmですので、余裕で収まります。トランスを載せた基板の上に、33 mmのスペーサ(廣杉計器、BSB-333E)を立てて、その上にもう1枚の基板を載せます(写真D)。FL 24/15トランスの高さは31.4 mmですので、ケースの上カバーとの間に0.8 mmの隙間が残ります。

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写真D 電源トランスと基板の取り付け

 上カバーを開けた状態では、ほとんど聞こえなかったのですが、上カバーを閉めるとトランスがカバーを震わせて「ブーン」とうなってしまいました。そこでソルボシート2tを、トランスの上面を覆うサイズに切って上カバー側に貼り付けました(写真E)。隙間は0.8 mmですが、手で押さえてカバーのネジを締めれば留まります。うなり音も、気にならないくらいに抑えられました。

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写真E 上カバーへのソルボシートの貼付

 ヘッドホンアンプ基板は、3tのシャーシに5 mmスペーサ(廣杉計器、MSB-305-03E)を立てて、その上に載せます。基板にPreciDip社ICソケットを載せ、その上にMUSES 03を差し込み、その上からM6×55 mmのスペーサ(廣杉計器、ASB-655E)をデッドマスとしています。デッドマスをバカにしてはいけません。どっしりとした安定感のある音像を聞かせてくれます。それに、ヒートシンクとしても働いてくれています。デッドマスなしでは、連続最大出力を維持できません。

 それから、秋月電子で MUSES 03 におまけでついてくるICソケットは使いません。せっかくICの足の材質までこだわって作られた MUSES 03 なのに、あのソケットを使うとギスギスした音が付け加わります。ICソケットは接点のメッキ材質と接触圧が音に影響します。Preci-dipがお薦めです。

 デッドマスと上カバーの間には1 mmの隙間が残りますので、こちらもソルボシート2tを、デッドマスの上面を覆うサイズに切って、放熱口にはみ出さないように、上カバー側に貼り付けます。ソルボシートでデッドマスがズレないように押さえています。なお、ソルボシートは、台紙の方を外して上カバーに貼り付けますが、薄いビニールはそのままにしておきます。両方とも剥がすと、あとから上カバーを開けられなくなってしまいます。

 電圧リミッタ基板は、左サイドに配置しました。写真Fに示すように、NS-10を基板から浮かせて取り付け、サイドの取付金具に接するようにします。対流でケース内の空気に放熱するうちのいくらかでも輻射熱で直接ケースに伝えようとの魂胆です。写真Bに示したように廣杉計器VAB-310Eスペーサの片方の穴を3.2 mmのドリルでネジ山をつぶしておき、残ったネジ穴にM3×5ネジを用いて基板に取り付けます。シャーシには、ネジ山をつぶした穴にM3×12ネジを用いて固定します。トランジスタはM3×5ネジを用いてシャーシに固定します。シリコングリスの塗布は不要です。80 %くらいの熱はNS-10から放出されます。

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写真F 電圧リミッタボードの実装

 フロントパネル(第7図(上))とリアパネル(第7図(下))には、298×72, 282×72 mmの真鍮3tのサブパネルを作りました。フロントパネルは、UCケースの1.7tアルミパネルのフニャッとした感触をなくせるだけですが、リアパネルは、RCAソケットとスピーカターミナルを載せますので、クッキリとした音像定位に効きます。

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第7図 フロント&リアパネル加工

 パネルとサブパネルの接着には、ポリマー系の接着剤を使いましたが、1枚が電気的に浮いてしまいました。ここは上から銅箔テープを貼って導通させています。エポキシ接着剤を使って、ガッチリとクランプで挟んで製作したときには、すべて導通していました。こちらがお薦めです。リアパネルはRCAソケットとスピーカターミナルを仮止めして穴がずれないようにします。接着剤が乾くまではクランプで挟みます。

 ケースの足はタカチAFS30-12Sを用いました。これも接着しています。

 電源スイッチはIDEC LB6照光スイッチです。青色LEDとしています。サブパネルを取り付けると、ステンレス製の取付金具を削らなくてはならなくなるのが難点です。

 サーキットブレーカは、ACインレットに直接取り付けるSK_NRP1_1A基板を作りました(写真F)。これを使えば、リアパネルの円穴を一つ減らせます。ACインレットの裏側から差し込めます。便利です。サーキットブレーカには、IDEC NRPF10-1A使用しました。以前に用いていたNRF110との音の差は感じません。どちらも、熱動引出式サーキットプロテクタであり、構造も同じなのでしょう。いずれも、ヒューズよりも透明感のある音を聞かせてくれます。

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写真G  ACインレットに取り付けたサーキットブレーカSK_NRP1_1A

 基板間と端子間の接続には協和ハーモネット3265 AWG24を使用しています。音的には可もなく不可もなしの線ですが、配線は、しやすい。入力端子のGNDから、シャーシに1点アースします。

 

特性

 第8図に4Ω負荷での周波数特性を示します。-3 dB点は450 kHzです。

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 第9図に100 kHz方形波応答を示します。良好です。

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第9図 100 kHz 方形波応答

 第10図に4Ω負荷でのひずみ特性を示します。最大出力は12 Wです。5 W付近で歪率の上昇がみられました。これは電圧リミッタが動作を停止するためです。これより下では電源電圧は±18 V付近にリミットされていますが、このあたりから下がります。しかし、連続波応答であって、音楽信号ではピークに対して平均音圧が-4 dBなんてことはありません。ですから、常に電圧リミッタが動作した状態で鳴らすことになるでしょう。

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 製作途上で写真Hに示すように、トランス2個としたバージョンを製作し、トランス6個バージョンと聞き比べました。トランス2個バージョンも7 Wちょっとの出力が得られます。パワー的には、我が家では5 Wのパラレル・ワールド5+でも不足はありませんでしたので十分です。音がどうなるかとの興味で試しました。

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写真H 2トランスバージョンと6トランスバージョン

 当然ながら、トーンはよく似ています。どちらもMUSES 03の透明感あふれる音色をそのまま聞かせてくれます。2個バージョンと6個バージョンでステレオにしても、音色的には、違和感なく聞いていられます。

 ですから、コスト的にたいへんでしたら、まずはトランス2個でヘッドホンアンプ基板も2枚としてお作りください。パラレル・ワールド5+と同じ構成です。クオリティ的にも基板3枚構成よりもお薦めです。それで出力に不足なければ、基板2枚でトランスを4個として5++仕様とされるのがよいでしょう。音的にはベストと思います。出力不足であれば基板を増やします。シャーシはケースの下カバーに載せた状態で、すべてのパーツを上から取り付けられるように設計しています。

 話を戻します。音場的にはトランス2個バージョンでは、平板的というか、スピーカにまとわりつくというか、音色は同じなのですが、ざわつき感があります。これがあると、海の透明感が失われるように水底の砂や岩がはっきりとしなくなり、音それぞれがぼやっとする感じです。広がり感がボケッとしてきます。ステレオで聞いていると、残念ながら2個バージョンに定位が引っぱられます。

 それと比べると6個バージョンは、一つ一つの音が形を持っているようにクリアに聞かせてくれます。定位感が改善するというよりも、それぞれの楽器の音に焦点を合わせやすくなるというか、オーケストラの演奏をわかりやすく感じます。6個バージョンでステレオとすると、音が弾みます。聞いていて楽しい。

 お勧めできるパワーアンプです。次は、秘密兵器の開発を進めます。

 

参考文献

新日本無線、NJM7400データシート

​(掲載 ラジオ技術2019年8月号)

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