コネクタには防振が重要だ
- Toshiyuki Beppu
- 2022年6月26日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年7月3日

コネクタは必要不可欠なパーツです。しかしコネクタは、音質を劣化させるパーツです。どんな高級コネクタであっても、ハンダ付けした電線にはかないません。機械的接点を通すよりも、金属結晶を通すほうが音質劣化を抑えられます。
とはいえ、コネクタをなくすことは現実的ではありません。いちいち半田ごてをひっぱり出して線を外して付け替えるなんて、私にはできません。なにを隠そう、試みて挫折した経験があります。
それでも、RCA ピンジャックのように、同じ規格のコネクタであっても、音のよい、すなわち音質劣化の小さなものと、音の悪い、つまりは音質劣化の大きなものがあります。ただし劣化の大小は、聞かなければわかりません。
さて、あるヘッドホンアンプ・コンテストに出品するために1台を組み立てています。そのコンテストのレギュレーションでは、3.5 mm のヘッドホンジャックが指定されています。ですけど、手元のケースには 1/4インチ(6.35 mm)ジャック用の穴が空いています。
かなり以前ですが、6.35 mm と 3.5 mm のジャックをいくつか聞き比べました。大きいほうも小さいほうも、それぞれ5、6種類を比べました。そのときの、ちっちゃいほうのベストが Switchcraft 35LJNS です。中継用ジャックですが、Φ6のパネル穴にも取り付け可能です。その音は、ヤワなプラスチックボディ(Switchcraft の他の品と他社品(複数)を比べました)ジャックとは違います。クッキリとした音像を聞かせてくれます。ニッケルメッキされた真鍮製ボディに収められた構造(中身は見えないですけど)が効いているのでしょう。(余談ですが Switchcaft にはよく似た型番の 35LJN があります。35LJNS とカバーのケーブルホールのサイズが異なるだけで、接点は同じ構造です)。
ただ、35LJNS のGNDのタブはニッケルメッキされた鉄板です。ここが気に入らなくて、ワイヤをジャックのハウジングに挟んで締めたことがあります。

結果は、違ったようには聞こえませんでした。それでも懲りずに、ジャックのボディに直接ハンダ付けも試しました。それもまた、違いは聞こえませんでした。
ところで、ジャックの大きい方のトップである Switchcraft 12B と小さいほうのトップを比べると、でかいほうが良い。私のAKGのヘッドホンは 3.5 mm のプラグが付いていて、ネジ止め式の 6.35 mm 変換プラグがセットになっています。ですから、6.35 mm のジャックを使うと変換プラグの接点が余計に入ります。それでも、でっかいほうがクッキリとした音を聞かせてくれます。
経験的に、機械的構造がガッシリとしたほうが、音質劣化は小さいですね。ニッケルメッキされた銅合金接触子をベーク板でがっしりと挟み込んだ構造が、12B の音を支えていますね。6.35 mm でもプラスチックボディのジャックは、音がボケます。
また、構造だけが音質劣化を決める要因ではありません。とある12B の模造金メッキ品は、キンキンとしたメタリックなピーキー感があり、酷い音でした。メッキも重要ですね。メッキのひかり方が安っぽい品に、これはRCAジャックも同じですが、よいものはありません。
その後、バランス調整ユニット EVR-BALCON を搭載したヘッドホンアンプを作りました。そのパネルには、ふたつのヘッドホンジャックを並べるスペースがありません。ですので、音質劣化の小さいほうを採用しました。

以上の顛末にて、手元のケースにはΦ9.5 の穴が空いています。ここに、穴サイズΦ6 の 3.5 mm ジャックは取り付けられない。ところが、35LJNS の外形はΦ10.3。これならちょうど塞げそうです。
よし、ホルダを作って押さえ込もう、と考えて10t の真鍮フラットバーに穴を開けました。ジャックの固定には、スリットを切ってネジで締め付けようか、とも考えたのですが、面倒なので接着でごまかします。その代わり、穴は 35LJNS が入るギリギリにしました。接着層を薄くしたほうが効果が高まる(?)とアホなことを考えて、です。

もちろん、作ったからには聞きます。いろいろと考えて試すのですが、まあ、10を考えたうちの3くらいですね、良くなるのは。5は変わらない。35LJNS のGNDタブの二件も変わらなかった。あるいは、考えたあげくに聞いたらがっかり、となることも2割はあります。押入には段ボール二箱の残骸となった基板が残されています。これらは、高価な部品を回収しないと捨てられない(笑)。
このアンプでは、リアパネルの出力端子へのラインを、RCAジャックにつなぐ前に引き出して“ノーマル”の 35LJNS につなぎました。フロントパネルへのラインにはホルダ付き 35LJNS を接続します。これでホルダの効果を差し替え試聴できます。

差ははっきりと感じられます。オーケストラの楽器相互の混濁感が減って、各パートがより聞き分けやすくなります。ただ、アンプ試作途上であって、まだまだ音が固い状態でしたので、ハイ上がりのバランスにも聞こえました。ホルダなしのほうが、ボケッとしていてる分、低域の量感があるように感じられたのです。ですけど、ホルダ付きのほうがクリアさで優ると判断して、採用です。
最終形がこちら。ホルダ(試作2個目)を3t の真鍮サブシャーシにネジ止めしました。

ホルダを取り付けた 35LJNS は 12B に肉薄したかな? いまは手持ちがないので、比較できていません。