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Toshiyuki Beppu

真鍮基板ヘッドホン・ドライバの音

更新日:2022年9月23日



 写真はヘッドホン・ドライバ 2021モデル(写真上)と 2022モデル(写真下)です。この2台、外見上はヘッドホンジャックとツマミが違うだけ(2021モデルには比較のために変換プラグが挿してあります)ですが、ふたを開けると、


EVR-323ヘッドホン・ドライバ 2021モデル
EVR-323ヘッドホン・ドライバ 2022モデル

ほとんど同じに見えますよね。そのとおりです。同じ回路、(ほぼ)同じパーツ。基板だけを作り替えて、音を比べようとの試みです。


 2021モデルの基板は、ガラスエポキシ。ただし、そこいらの1.6 mm 厚ではなくて 2.0 mm 厚の強化版です。わずか25%の厚みアップですが、剛性アップした分、音もクッキリとしています。



 それに対して2022モデルは真鍮基板。エポキシ樹脂の基板を真鍮ベースにガッチリと固定して剛性をアップします。ケースの高さ制約があり、パスコン容量が減っていますが、それよりも、剛性アップです!



 EVR は、2021モデルが EVR-323OS-00-R0。EVR-323シリーズも、電子ボリューム IC MUSES 72323 を2 mm 厚のガラエポ基板に搭載し、さらに 3 mm 厚の真鍮プレートでサポートして基板剛性をアップしています。



 2022モデルに搭載の EVR-323X は、回路と使用部品はまったく同じで、基板を真鍮ベースに接着しました。さらなる剛性アップ!さらなるクレージーさ、ともいいますね。




 2022モデルと2021モデルを、S君が、とあるヘッドホンアンプ・コンテストに出品してくれました。来場者に真鍮基板を聞いて戴こうと考えたからです。以下、彼のメールを引用します。


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 ヘッドフォンアンプコンテストは、本日無事に終了しました。会期の延長もあって、当初予定していたよりも多くの方に試聴いただきました。以下、別府アンプについての来場者の感想をまとめます。

〇2022年モデル自体の感想

  • ボーカルがはっきりとして心地よく聞こえる

  • 静かなところはちゃんと静かに再生されていてメリハリがある。それがよかった

  • 耳に刺さるような音がなく、とても上品でスムーズな音に聞こえた

  • 音がまとまっている


〇2021年モデルと2022年モデルを比較しての感想

  • 基本的な音の傾向は変わらないが、2021年モデルより細かな音が再生されるようになっている

  • 音の解像度が増した

  • 歯切れがよくなった。アタックとディケイ(音の減衰)が適正になった

  • 回路構成が同じなのに、真鍮基板にしただけでこんなに音が変わるとは思わなかった。意外

 また、私自身の感想をお伝えするのが遅くなり申し訳ございません。


 2022年モデルは色付けが少なく、しっかりとした安定感のある音」と感じました。2021年モデルと比較した印象は、来場者のコメント「基本的な音の傾向は変わらないが、より細かな音が再生される」とまったく同じです。さらに広いレンジを見渡せるようになり、楽器一つ一つのディテールがより鮮明にわかるようになっています。アンプにまとわりついてくる固有の音が少ないため音楽を聴くことに集中でき、長時間であっても聴き疲れしません。音質や解像度がうんぬんという話ではなく、純粋に音楽そのものを楽しませてくれるアンプだと思います。  気になる点は、若干、左右の分離感が狭いことと、低音の押しが弱いことです。左右の分離感については、私のアンプと比較しての印象です。私のアンプは左右独立電源であり、L と R のチャネルがかっちりと分離されます。それと比べると、音が中心に集まるように感じます。ただ、電源を分離していない他のアンプと比べれば、広い分離感があります。低音については、バスドラムなどに少々物足りなさを感じます。試聴に使用したヘッドホン(K812)が、アンプにとっては重い負荷なのかもしれません。


 とは言いましても、私のアンプと比較すると、

  • 表現できる音のレンジの広さ(左右の広がりではなく深さ)

  • 無音時の静寂感

​が違います。「表現できる音のレンジ」としましたが、「深さ」というか音の細部に至る再現力が、圧倒的です。

 両モデルの内部を拝見しました。真鍮基板以外に大きな違いは見当たりません。やはり、真鍮基板がこの再現力を実現しているのでしょう。2022年モデルをしばらく拝借させて頂き、この音の深さを超えられるように、私のアンプを工夫します。

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 製作者の手前、誉め称えてくれていますが、うぬぼれの強い製作者も、まったく同じ印象です。真鍮基板によってアンプ固有の音が減り、声や楽器それぞれの音が、よりストレートに伝わってくると感じます。

 アンプに限らずオーディオ装置の個性は、音楽に余計な色づけ加えます。たとえ「魅力的な音」であってもアイテムの個性は、録音された響きを覆い隠します。パーカッションのアタック音にも、弦楽器の摩擦音と共振音にも、管楽器の空気音と共鳴音にも、人の声にも拍手にも、固有の音を付け加え、元々の音を聞きにくくします。


 ですから、「固有の音」を感じさせない装置ほど、音楽に没入させてくれます。真鍮基板は「音楽を聞くのを邪魔しない音」に一歩近づけてくれると感じています。


エポキシを充填して硬化待ちの 真鍮基板

 ヘッドホン・ドライバの製作記事はこちら



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