ラジオ技術誌1989年2月号から1994年1月号に掲載されたD/Aアンプの実験記と製作記をアップしました。古い話で申し訳ありません。この後、私には、ほとんど進展がありません。
ところで、昨年、思うところがあり某高級ネットワークオーディオ機器を買いました。この30年、いろいろと“新技術”は宣伝されていますが、そして、そのお陰で値段は安くなっていますが、メーカーの音にはほとんど進歩がないことを実感できました。なぜなら、30年前と同じ“音”が聞こえるからです。あの音が不満だから、私は自作に取り組んだのでした。「なぜ、CDはデジタル録音のレコードより音が悪いのだろう?」と。
進歩がないのは、音を聞いて確かめることができていないから、と思います。アナログであろうとデジタルであろうと、音を聞いて確かめることが重要です。あたりまえのことですが、聞かなければ、どう変ったのかわかりません。
ただ、聞くのは面倒です。ついつい、なんらかの“理論”とか“数字”に頼りたくなるものです。その結果、音を聞かないで決定が積み重ねられるのではないでしょうか。そうして、音の面では進歩のない新製品につながるのでしょう。
たとえば、デジタルには“ビット数”信仰があります。デジタル数値をアナログ電圧信号に変換する際のビット数が多ければよいとの考え方です。そう信じたい気持ちはわかります。でも、もともとの録音に16ビットしか含まれていないデータに、フィルタ演算の割り算で出てきた17ビットより下を加えたとして、なぜ音がよくなるのでしょうか。そんな演算をしても、情報量は増えるどころか減るだけです(可逆性が保たれるのなら増減はありません)。
まあ、情報量はどうでもよい。フィルタ演算をする前と後の音が“どう違うのか”を確かめて、積み重ねているのでしょうか。
「音がよくなる」という人に、尋ねてみましょう。「どうよくなったのですか?」と。聞いて確認している人であれば、そのときの感覚を語ってくれるでしょう。でも、聞いたことのない人には語れません。ただ「音がよくなった」と繰り返すだけです。
まだまだ、時代に取り残されていないような気がしています。古い話ですが、ご笑覧いただけたら幸いです。