デッドマスを載せた SKHP-05X 基板の聞かせてくれた音は、想像以上に解像度の高いものでした。MUSES 05 は分解能というか、楽器それぞれの音を聞かせてくれるICだとわかっていましたが、真鍮基板に載せて、その上にデッドマスも載せて、あれだけはっきりと響き分けてくれるとは。聞いていて楽しい。
その SKHP-05X には、前作のヘッドホンドライバで好評を博した EVR-323X 電子アッテネータを組み合わせるつもりでした。ところが、SKHP-05X を聞いているうちに、さらなる欲が頭をもたげてきました。
OS-CON SP をカップリングに用いた EVR-323X
MUSES 72323 / 72320 電子ボリューム IC の弱点は、入力にカップリング・キャパシタを必要とすることです。なくても動作に問題はないのですが、送り出し機器のわずかな DC オフセットが、レベル切り替え時にポッポッと雑音を発生させてしまいます。
それを防ぐためのカップリング・キャパシタですが、そこそこの容量を必要とします。電子ボリューム IC の入力抵抗は 20 kΩです。カットオフ周波数を可聴帯域の下限 20 Hz でよいとするなら、キャパシタ容量は 0.4μF です。しかし、これでは不足です。低域にまだるっこいような色づけを生じます。経験的に、カットオフ周波数は下限の 1/10 に下げたい。そのためには、4 μF を必要とします。
これだけの容量を EVR-323 の 45 × 41 mm の基板に収めるためには、積層セラミック、または、薄膜高分子積層コンデンサ(PMLCAP)、あるいは、電解(ケミコン)しか候補はありません。
残念ながら積層セラミックは、例外なくガサガサした特有のひずみがあります。却下。
PMLCAP は、バランスは悪くなかったのですが、ペラペラした音がつきまといました。これまた却下。
ケミコンは、フォーカスが合ってない写真のようにディテールがボケてしまうものと、帯域バランスが悪くピーキーな音がするものが多く、これらも却下。
なのですが、日ケミ RNS と“昔の”OS-CON SP は、例外的にバランスの良い音を聞かせてくれます。ですので、この2種を EVR-323 のカプリングに採用しました。
EVR-323OS-00-R0 バッファなし、レギュレータなし仕様
ところが、できあがった EVR-323 を見ると、ASC X363 が載りそうです。なんとかギリギリで載せたところが、こちら。
EVR-323ASC 基板
組み上げて、試聴すると、良いですねぇ。カプリングなしの直結と比べましたが、音質劣化は最小。
EVR-323ASC-03-AC
試聴用に入出力RCAジャックを取り付けている
ですので、真鍮基板 EVR にも X363 を載せたかったのです。でも、どうやっても、タカチ UC16-5-22DD ケースには入りません。
そこで、ケミコンでベストの“昔の”OS-CON SP を用いて、48×50 mm の真鍮基板を作りました。なんとかケースに押し込んで、極めて解像度の高いヘッドホンドライバが完成しました。
ヘッドホンドライバに使用した EVR-323X と SKHP-03X (MUSES 03)
ところが、苦労して作ったのに、UCケースのブロンズメッキは廃番・・・。
仕方なく、次回は一回り大きなタカチ HY70-23-23SS を使うことにしました。でも、このケース、両サイドにヒートシンクがあってムダに大きいのが気に入らない。
ですけど、160×220 mm の UC16-5-22 に比べ、230×230 mm の HY70-23-23は、奥行きがあります。EVRの真鍮基板もサイズアップできます。そうなれば、ASC X363 を載せられそうです!
X363 を載せられそう!
EVR-323XX を組み立てたところです。まだ音は聞いていませんが、悪いはずがない。
ASC X363 を載せたEVR323XX