EVR-323電子アッテネータの開発
- Toshiyuki Beppu
- 2021年1月8日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年1月17日

ラジオ技術2021年1月号ではEVR-323電子アッテネータを、2月号では製作記を発表しました。
2012年に発表した前作EVR-3のときも、同じことを繰り返していましたが、
↓←←←←←←←←
なにかを考えつく ↑
↓ ↑
試作する ↑
↓ 次を考える
比較試聴する ↑
↓ ↑
採用/不採用を決める →→↑
このループです。いつもこの繰り返しですね。
このループでは、考えつくごとに比較試聴を繰り返します。
たとえば、
・基板の間のスペーサをM2/M3と交換して、試聴
・EVR-3のレギュレータ基板に載った部品の足に基準電圧安定用キャパシタを、はんだ付けして/外して、試聴
・MUSES72323を載せたアッテネータ基板を4枚作り、それにエージングしたカップリング・キャパシタ候補を取り付けて、差し替え試聴 → 不採用となった候補のリードを切り離して、そこに次の候補をハンダ付け
・基板間を、ピンで接続/リードをハンダ付けして、差し替え試聴
・パターンの異なる基板を作って、差し替え試聴
のように繰り返しました。
ここで、もっとも重要なのは比較試聴ですね。比べて聞かなければ、どれだけ変わったかの、どのように聞こえ方が変わったかの、記憶を積み重ねることができません。その積み重ねがなければ、次なる判断につながりません。たとえば、サイズ的にケースに収まらなくて、どちらかを諦めなければならないとき、どうすればいいかを決められません。
ただし、試すときには、交換のしやすさを優先しています。例をあげれば、真鍮プレートは取り付けていません。基板と基板の間のスペーサも2本に(ときにはなしに)しています。カップリング・キャパシタのように、リードを引き出した状態にして、そこでハンダ付けして交換することもあります。
一度に比較する要素を、できる限り一種類にします。そうして比較試聴すれば、相対差としての比較であっても、判断を誤ることはありません。
このように個別に比較を繰り返して、それぞれの基板ができあがってから組み合わせて、EVR-323の音を確認しました。
一方で、ケースに組み込む要素も、個別に比較試聴していました。
たとえば、
・フューズとサーキットブレーカを入れ替えて、試聴
・電源トランスを何種類か並べて、交換試聴
・真鍮とアルミのシャーシの2種類を入れ替えて、試聴
・同じシリーズの電源トランスを入れ替えて、アンプへの供給電圧を変化させて、試聴
などです。すべて試聴して、どちらがよいかを確認しています。
ただし、こちらも比較するときにはバラック状態です。基板をすべてネジ止めしていては、交換するごとに4本(ときにはそれ以上)の、外して締める作業を繰り返さなければなりません。これは、繰り返しやっているとけっこうな手間です。
ですから、最終的にケースに組み込んだときの音は、ある程度予想はつくのですが、正確には見積もれません。

箱に入れたEVR-323の音を聞いたときの第一印象は、製作記に書いたとおりです。
とにかく、余計な音を、取り除けば除くほど、音はクリアになり、録音されていた響きがそのまま感じられるようになります。そして、装置固有の音が気にならなくなるほど、音楽に浸れるようになります。
まさに、クリアな音です。お薦めできる1台です。