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Toshiyuki Beppu

MUSES 05 を使うぞ! その3

更新日:2023年4月2日



(その2はこちら


 パワートランジスタは、取り付けるヒートシンクによって音が変わります。フィンの薄いものは概してよくない。フィンを指ではじくと“チーン”と鳴りますが、あの鳴りが、すべての音につきまといます。

 パーツを載せるプリント基板も音に影響します。その昔、「ガラエポか、紙エポか、ベークか」という論争がありましたが、音が違うことは経験していますが、材質よりも厚みのほうが影響は大きい。厚いほうが、よりクリアな音を聞かせてくれます。おそらくは、厚みによって基板の剛性が高まり、パーツをしっかりと支えるためと考えます。


ガラエポ:ガラスエポキシ基板。ガラス繊維を布状に編んで重ねたものにエポキシ樹脂を含浸させた基板
紙エポ:紙エポキシ基板。紙基材にエポキシ樹脂を含浸させた基板
ベーク:紙基材にフェノール樹脂素材を含侵させた基板

 その剛性を、さらに高めたものが“真鍮基板”です。その音は、霧が晴れたかのように透明感がアップし、細かな音の違いをよりはっきりと示してくれます。


 ですから、MUSES 05 も真鍮基板に載せます。


 真鍮基板では、1.6 t のガラスエポキシ基板にピンをハンダ付けし、そのピンにパーツをハンダ付けします。ガラエポ基板は真鍮ベースに固定します。真鍮ベースは、20 t の真鍮フラットバーに深さ 2 mm の“バスタブ”を掘ったものです。このバスタブにエポキシ樹脂を流し込みます。固まった樹脂はピンを下から支えるのですが、樹脂全体が真鍮ベースによって囲われています。ベースと一体化した樹脂の剛性によってピンは支えられています。

 同時に基板も、1.6 + 2.0 mm の厚みとなるとともに、18 mm 真鍮板に接着された状態となります。ここに取り付けられる MUSES 05 も、しっかりとサポートされます。



 エポキシ樹脂を充填するときには、真鍮ベースにガラエポ基板をネジで固定します。樹脂が漏れないように、周囲にマスキングテープを貼ります。作業の際は、段ボール紙とティッシュペーパーを敷いて、机に樹脂が付着しないようにします。

 


 エポキシ樹脂は電気絶縁用を使っていました。ところが、2020年の毒物及び劇物指定令改正のため入手できなくなりました。そこで、注形用の透明樹脂を試しました。



 ありがたいことに、透明樹脂は少量で購入できます。なにせ、基板1枚を固めるのに約 8 ml しか使いません。電気絶縁用樹脂は、1 kg 単位でしか売っていません。ほとんどが使い残しとなります。


 基板は2枚を組み立てました。樹脂によって音に差が生じないかを確認するためです。1枚には透明注形用を、もう1枚には以前からの電気絶縁用を充填しました。

 透明注形用は透明です(当然だ)。どこかに付着してもわかりません。また、電気絶縁用は真っ黒です。付着すると色が取れません。どちらも、ゴム手袋をして、漏れたり付着したりしたときにすぐ拭けるようにティッシュを準備して作業します。

 注入には、10 ml のシリンジが使いやすい。主材と硬化剤それぞれを吸い上げてカップに入れるためと、カップで混合した樹脂を真鍮ベースに注入するため、計3本を使います。もちろん、使い捨てにします。主材に硬化剤を、あるいは硬化剤に主材を混入させると、どちらも使えなくなってしまいます。また、主材と硬化剤の重量比を指定どおりに混合することが重要です。混合後に、どちらかを吸い上げたシリンジで注入すると比率が狂ってしまいます。



 さて、作業性です。透明注形用は「透明」です(あたりまえだ)。つまり、よ~く、気をつけていないと見えない。これが文字どおり「盲点」となりました。基板にはシリンジが入る穴を二つ用意してあります。一方から注入しながら、他方の穴を見て、あふれ出ないギリギリまできたら止めます。ところが、透明なのでいっぱいになったところが見えづらい。「8 ml 入ったのに」と思いながら「まだかな」とピストンを押し、あふれさせてしまいました。

 ただ、あふれた樹脂も「透明」です。あふれた跡が目立たない。黒の樹脂をあふれさせると、あとが汚れてみっともない(笑)。こちらの基板は下のほうに白い線がみえますが、あふれた樹脂を拭き取った跡です。



 電気絶縁用は24時間くらいで完全硬化しますが、透明注形用は2日経っても、まだ幾分柔らかい。3日を過ぎると固くなったようですが、もうちょっと待ってから比較試聴します。


次回に続く)



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