(その3はこちら)
真鍮ベースにエポキシ樹脂を充填し、2枚の真鍮基板ができあがりました。一方は、黒色の電気絶縁用、もう一方は透明な注形用エポキシを用いました。この両者の音の差を確認します。
いうまでもありませんが、比較試聴は重要です。なにかを変化させたときには、どれだけの差があるかを聞かなければ効果を判断できません。
そして、比較の際には、比較対象以外のパラメータを揃えることが重要です。充填するエポキシ材の違いを聞くのであれば、基板や使用部品や配線材や端子を、すべて同じにします。タイトル写真にあるヘッドホンジャックは安物ですけど、安物同士でも同じに揃えます。
さて、試聴です。
単なるエポキシ基板だった時と比べて、音の透明感が深まり、それぞれの楽器の音がクリアになって分離感がアップしています。
作るのが面倒な真鍮基板ですが、その音を聞くと,止められない。「よくなった」と慢心してないで、2種のエポキシを聞き比べます。
黒の電気絶縁用に比べ注形用の透明エポキシは、わずかに低域が甘いというか、ぼやっとした感があります。ただし、その差はわずかです。繰り返し聞いてやっと識別できるくらいです。一方、中高域に差は感じられません。音の伸びやかさ、つややかさは同じです。クオリティの差はありません。総合的な評価としては「ほぼ同じ」。どちらもよい。
「そうなるだろう」と思っていたとおりの結果でしたが、同じ種類の樹脂です。同じような硬さに固まるなら、同じような音になって不思議はありません。
ところで、真鍮基板に載せてガッチリと支持した MUSES 05 ですが、MUSES 03 真鍮基板にデッドマスを載せたときの音の変化が思い出されます。
もしかして、MUSES 05 でも?
というのは順序が逆で、じつは SKHP-05X 基板を作るときから MUSES 05 にデッドマスを載せるつもりでした。MUSES 05 の両端に立てたピンは、10 mm 角の基板取り付けブロックがピタリと入る間隔にしてあります。
で、載せてみました。
ところが、ピンの間には入るのですが、MUSES 05 に届かない。10 mm 角の真鍮ブロックは、広くなったピンの根元に載って浮かんでいます。あと、たったの 0.4 mm 届いていない・・・。
あわてて、ブロックをグラインダで削りました。
あらためて載せたところ。ピタリと載っています。これなら、デッドマスとして働いてくれるでしょう。
さて、MUSES 05 の電極は,極めてわずかな面積しかありません。機械的には、その部分だけでハンダが支えています。こんな状態で MUSES 05 に大きなデッドマスを接着すれば、加速度によってハンダに力が加わって破損するのは、火を見るよりも明らかです。ですから、MUSES 05 へはデッドマスを接着できません。「載せる」だけとします。
しかし、載せただけでは,アンプを動かせばデッドマスはズレてしまうでしょう。それではマズいですから、位置をずらさないためにピンを用意しました。真鍮ブロックがずれないように、ピンに銅箔テープで巻き付けます。こうしておけば、デッドマスは「載っている」だけの状態です。
さらにこのピンは、IC 下面の GND プレーンともつなげています。そうです。放熱塔としての役割も期待されています。この放熱塔に,熱伝導に優れた銅箔テープで固定するのですから、真鍮ブロックは放熱器としても働くはずです。IC 上面からの熱も放熱させて,一石三鳥かな?
それでは、基板取り付けブロックを載せた/デッドマスなし、の比較です。
ヴァイオリンのソロでは,最初の一音でクッキリとしているとわかります。楽器の音がクリアになるため、合奏ではヴァイオリンの陰で奏でられるビオラの旋律を聞きやすくしてくれます。大げさに言えば、スコアを提示してくれるかのようです。
デッドマスの効果は小さくありません。というか、私の予想を超えていました。基板に植えられたピンにガッシリと固定されるRやCと比べ、わずかなハンダでとまっているだけの MUSES 05 では、真鍮基板の防振効果も相対的なものとなってしまうのでしょうか。デッドマスは必須のようです。
それなら、デッドマスを大きくしたくなります。基板取付ブロックの上に真鍮棒を接着することも考えましたが、どうせなら、と 10×15 の平角棒を削りました。IC 両側のピンに合わせて穴を空け、そこに差し込む構造です。
IC に載せる面には傾斜を加工して、ピンの下部にぶつからないようにしました。
できたところで、基板取付ブロックと自作デッドマスの比較です。
7 g の基板取付ブロックを載せただけでも、楽器それぞれの音がクリアになって、よりクッキリと各パートが聞こえるのですが、47 g の自作デッドマスは、より明確に聞かせてくれます。メインのフルートに添えられたオーボエの音を,さりげなくわからせてくれるかのようです。
デッドマスをさらに大きくするとどうか。試したいところですが、ケースに収めるには高さで限界です。
真鍮基板を試されたい方にはご用意致します。メールにてお問い合わせください。記事として発表するからには、製作可能としていなければ「絵に描いた餅」ですよね。それでは、読んでいただく人に失礼だと考えます。追試可能にしてから発表しています。
さて、次は電源です。どうするか。
(次回に続く)