(その4はこちら)
やっとのことで、EVR-323XX と SKHP-05X 基板をシャーシに載せました。MUSES 72323 を載せた電子アッテネータと、MUSES 05 を載せたバッファアンプです。
電源には日ケミ KMH 25V 15000μF を抱かせます。音質の点で、大型ケミコンはネジ端子型に限ります。「ネジ端子を固定する構造が、陽極と陰極のアルミ箔をしっかりと支えているからだ」と、見てきたような空想を記しますが、リード線タイプと比べて音像感に優れた音を聞かせてくれます。
余談ですが、我が家のD/AにはKMHの前身SMEを用いています。製作から30年を過ぎた今宵も、何事もなく音楽を聞かせてくれます。信頼のネジ端子型です。
さて、その電源をどう供給するか。
BLOCKの電源トランスは、音はよいのですが、円安が重くのしかかっています。6 VA のトランスをたったの2個で“1諭吉”は厳しい。
30年はおろか、5年もすれば交換でしょうが「当座の出費は小さい」との理由、ではカッコ悪いので、「バッテリー電源の静寂さをヘッドホンでも楽しみたい」を表向きの理由として、EVRと MUSES 05 はバッテリーでドライブしました。
さて、バッテリーでドライブするとしても、電圧は高くしたいところです。パラレルワールド7では、6 V バッテリーを6直列にして“公称”±18 V としました。電子ボリュームICも、オペアンプも、電源電圧を高くしたほうが音の伸びやかさに優れます。ダイナミックレンジが広がったかのようで気持ちよい。ですけど、6 V のバッテリーに適当なサイズのモノがない。かといって、12 V バッテリーを4直列とした±24 Vでは高過ぎです。
以上の理由から、12V1.2Ah を2個で±12 V にしました。デジタル系は 6 V あれば足りるのですが、適当なサイズのモノがありませんので同じ12 V のバッテリーを用います。シャーシには3個のバッテリーが並びました。
パラレルワールド7では、バッテリー充電回路に手こずりました。1台あたり18個ものバッテリーを「個別に電圧リミッタを設けて定電流で充電」との構想は悪くなかったと思います。ですが、回路でいろいろとやらかしました。最終的には系統ごとに抵抗で電流制限と相成りましたが、最初からなぜ気づかなかったのだろう。毎度のことですが、設計の構想力に難がありますねぇ。
それと、充電に3個ものACアダプタを使用したのも気に入りません。デジタル系+Vddとアナログ系±Vccの、3系統のGND電位を同じにしなければなりませんから、それぞれにDCを供給するためです。が、みっともない。
1個のACアダプタでなんとかしたい。なにか手はないかなあ。と探していると秋月電子で絶縁型DC-DCコンバータをみつけました!
Minmax の MAU105 は 15 V, 67 mA 出力です。試しに低めの抵抗をつなぐと、電圧は多少下がりますが 100 mA 以上を流してくれます。13.7 V で 120 mA までは試しましたが、熱くなってきたのでテストは打ち切りました。電流さえ制限してやれば、多少は電圧が下がった状態でも使えそうです。それなら、MAU105の出力に逆流防止用ダイオードと抵抗を入れれば、バッテリー充電回路にできます。
ヘッドホンドライバの構成は、こうなりました。
コントロール回路は、アンプ回路の ON-OFF と、バッテリーの充電を担当します。バッテリー電圧を監視して、ACアダプタが接続されていれば充電し、電圧が上限に達したときに充電を終了します。
アンプが ON されたときには、バッテリーの充電はストップします。DC-DCコンバータに至るACアダプタからのラインは、ホットとコールドの両方を遮断します。片側だけをカットすれば充電は止まりますが、ACアダプタからの影響が残ります。PICマイコンによってバッテリー電圧を監視して、下限を下回ったときにはアンプを停止して、充電を再開します。
コントロール回路の基板は、バッテリーと同じ大きさにしました。これを裏パネルに固定します。
アンプ回路の ON-OFF には、OMRON G2RK-2 リレーを使用しました。ONとOFFの切り替え時にだけ操作電流を流す2巻線ラッチングタイプです。接点容量は十分にあります。デジタル系のバッテリーも 12 V にしましたので、リレーも 12 V タイプです。
完成まで、あと一歩。
(次回に続く)