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Toshiyuki Beppu

場所による商用電源の音の違い

更新日:2022年1月17日



 40年前に住んでいたアパートでは、道路を渡ったところにあった工場(の電気炉インバータ)の影響で、平日と休日でかなり音が違いました(その体験は、『電源トランスをオンオフする』にて)。その後日談です。といっても、これまた30年以上前の話です。引っ越した先の23区内のアパートでの体験です。


 その頃の私は、ある大学病院の研究所に勤めていました。ある日、装置が廃棄になるというので、解体して使えそうな部品を取り出してやろうと見に行きました。そこそこ特殊なパーツが使われているので、それらを実験装置に組み込むこともありました。


 医療用測定器では、ふつうの電源トランスの前に絶縁トランスを載せるなど、商用電源との間の絶縁に注意が払われています。なぜなら、家電製品ではまったく問題とならない1次側へのわずかなリーク電流が患者さんの体内に流れると、死亡事故を招く可能性があるからです。

 その装置にも、10 kVA の大きな絶縁トランス(タイトル写真。右下に比較のためΦ35 サイズのケミコンを置いています)が載っていました。「捨てるから持っていっていいよ」と云われ、取り出したのはよいのですが、20 kgくらいあります。タクシーでどうにか持って帰り、コンセントからこのトランスを通して、アンプに AC を供給しました。


 試聴すると、たしかに、トランスの音が加わったことが聞こえます。独特の狭帯域感があります。ところが、聞こえている帯域の静かさが違います。全帯域に渡ってざわざわした感じがサーッと消えて、周囲の雑音が減ったような感じです。

 ある意味、絶縁トランスを通した音は、バッテリーにつうじるものがあります。軽自動車用バッテリーを4個並べて±24 V 電源を試したときを思い出しました。音場を静かに感じます。回りが静かになるのですから、より細かな音まで聞こえます。

 装置を良くすれば良くするほど、同じアッテネータのポジションでも音量が下がったかのように(電気的に下がっていないことは確認しています)聞こえますが、まさにその傾向です。絶縁トランス“なし”、には戻せません。それから都内で三回引っ越ししましたが、ずっと絶縁トランスは使っていました。


 それから10年くらいを経て、田舎に移り住みました。もちろん、田舎でもコンセントの100 Vを、絶縁トランスを通してからアンプに供給していました。そうこうするうちに、好奇心が湧いてきました。ここでは絶縁トランスの効果はどう聞こえるだろうか?

 当然、疑問を持ったら聞き比べます。

 ところが、都内のときと比べて-40 dB ダウン。たしかに、絶縁トランスを通した狭帯域感は聞こえます。ですけど、静かさがアップしない。絶縁トランスを通しても通さなくても、楽器もヴォーカルも大差ありません。むしろ、通したときの狭帯域感が耳に突きます。

 何度も比べ(もちろん休日と平日も)ましたが、印象は変わりません。それからは、絶縁トランスを使っていません。棚の奥で埃をかぶっていたので、写真撮影のために掃除機をかけました。


 私の結論は、以下のとおりです。

  • 商用電源は、場所によって相当に音を違えている。

  • したがって、電源に関して他人が言うことが、自分に当てはまらなくても不思議はない。

  • だけれども、住んでみなければ商用電源の状態は判らない。引越はたいへんだから、現在地点でのベストを追求するしかない。


 このトランスには、後日談があります。







 



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