やはり、レギュレータはシャント方式がよい。シリーズ方式と比べシャント方式は、しっかりとした音像感、実在感を聞かせてくれます。
EVR-323を開発したときにもシャント・レギュレータは考えました。しかし、抵抗値の調整なしに実用的な入力電圧範囲を確保することは、どう計算しても無理でした。ここはEVRとしての使いやすさを優先しました。
それでも、製作記なら電源トランスを指定できます。入力電圧範囲も調べた上で計算できます。それなら、シャント・レギュレータです。そう考えて、レギュレータ基板SKVL-5を開発しました。ヘッドホン・ドライバに用いましたが、広い音場にクッキリ明確な音像感を聞かせてくれます。
一方、セレクタEVRは配線を交換して、よりナチュラルな帯域バランスになりました。これは、シャント・レギュレータにしたくなります。シャーシのスペースは十分に空いています。そこに、SKVL-5を追加しました。差し替え試聴できるように元々のEVR電源コネクタを残しました。しかし、もう戻すことはないでしょう。その音の差は、記憶に焼き付けられました。
とにかく、実在感のよさ。これがシャント・レギュレータの音です。ヘッドホン・ドライバ製作記では、『音質がクリアとか音像がクッキリしているとか響きがよいとか個別にいうことはなく、演奏会場ではこんな風に聞こえるのだ、とわかるような感じです』と記しましたが、その音質を支えているのがシャント・レギュレータです。
シリーズ・レギュレータ(それも、十通りちかくもの回路方式を比較してたどり着いた)と比べ、覆いかぶさる制御トランジスタの音をなくしたためでしょうか、コンサートホールでの、それもトップクラスの奏者を近くで聞いたときに伝わってくる、奏者の息づかい指づかいが、感じられるかのようです。