さんざん手こずっているバッテリー駆動アンプです。またもやバッテリー充電回路を修正する羽目に陥りました。
もともとは、317の定電流レギュレータから±各3直列のバッテリーに電流を流し、それぞれのバッテリーに接続した電圧リミッタで設定電圧に達したときに電流をシャントする構成でした(詳しくはこちら)。4.5 Ahのバッテリーですので、20時間充電率1/20C = 225 mA で定電流充電します。バッテリーの充電終了電圧は 6.76 V に設定しましたので、3直列で20.28 V です。終了電圧に達すると、30分ほどフロート充電をしてから充電を終了するようにプログラムしました。
充電回路用に、317とフォトスイッチを載せた基板を作りました。フォトスイッチは、アンプ動作時にはACアダプタをGND側も含めて切り離します。
基板を作り、まずはバラック状態で試しました。もちろん、ちゃんと動作します。ただ、チェックが甘かった。
バラックのときには自前の整流回路を用いていました。この回路は、無負荷での整流電圧がほぼ 23 V、そこから 200 mA を取り出すと 22 V くらいまで電圧が下がっていました。仮に電源電圧を 22 V としてバッテリー電圧を 20 V とすれば、この基板での消費電力Pは、
P = (22 - 20)×.225×2 = 0.90 W
です(実際には入出力間電圧 2 V では317には不足なので電流が減少し、消費電力はこれよりも下がります)。
その後、整流回路から 24 V のACアダプタに変更しました。これによって消費電力P'は、
P' = (24 - 20)×.225×2 = 1.80 W
となります。このとき、動作はするのですが、基板はかなり熱くなっていました。火傷には至らないので IC の温度は 60℃には達していないでしょう。でも、ケースに組み込めば、10℃は上昇すると見込まなければなりません。しかも、充電回路はアンプを使っていないときに動作します。暑い夏、クーラーのかかっていない部屋で動くこともあるでしょう。これはヤバい・・・。
設計に際しては、最も重い負荷条件を想定しなくてはなりません。その条件下でも確実に動くように計算します。想定が甘かったために事故に至った例は、枚挙にいとまがありません。
この定電流回路にとっては、バッテリー電圧が最低のときに最大消費がやってきます。バッテリーの最低電圧は 5.6 V に設定しましたので、3直列で 16.8 V です。このときの消費電力 P'max は、
P'max = (24 - 16.8)×.225×2 = 3.24 W
です。これでは、あの基板サイズでは耐えられない(既にかなり熱いのだから)。足りるかどうかわからないのですが、できる限りの大きさのヒートシンクを作りました。この基板の上には、12 mm のスペーサを介してPICマイコン基板を載せます。ですので、その隙間に入る高さ10 mm のヒートシンクです。
バッテリー電圧を下げるために、1日に2,3時間ですが、ほぼ3週間、充電しないで鳴らしました。下がったところで充電開始です。しかし、ケースの上カバーとフロントパネルを外した状態で、26℃設定のクーラーを点けた部屋の床に置いて、15分でヒートシンクは触れられないほどに熱くなります。やっぱり足りません。
さて、どうするか。裏パネルが広々としていますので、これをヒートシンクとして使えばよさそうです。基板を配置し直して、配線をやり直すのは面倒ですけど、放熱の問題は解消できるでしょう。
などと考えているうちに、思い当たりました。「バッテリーの上の電圧リミッタ基板は大丈夫か?」。
これまでのテストでは、こちらの基板はまったく熱くなっていません。でも、それはおかしい。充電終了の設定電圧 6.76 V で 225 mA をシャントすれば、1.52 W もの発熱になるはずです。ところが、念のために指で触れても、431もトランジスタも温かくなってはいません。
「そうか、6.76 V に達した状態を30分ほど保っても、電流の大部分はバッテリーのフローティング充電に使われているのだ」と、今頃になって気づきました。でも、ということは、「もしかして、この基板に225 mA を流せば過熱する?」
予備基板をテストすると、ぐんぐんと熱くなります。やっぱりか。
それなら、電圧リミッタ基板は、どれだけの電流までなら使えるか。試すと160 mA くらいです。ということは、充電電流をそれ以下にしなければなりません。「電流を減らせば、電流レギュレータ基板の発熱も減るからいいかな」とも考えましたが、150 mA としても消費電力は 2 W を超えます。もうちょっと下げなきゃ無理だろう。それなら、直列に抵抗を入れて電圧を下げるのはどうだろう・・・。
そんなことを考えていて気づきました。「レギュレータなんて面倒なモノは必要ない。抵抗でよいのだ」と。
LTspiceで、317の定電流レギュレータを計算すると、電流はもちろん一定となります。
これに対して 27Ω の抵抗では、バッテリーの充電終了電圧では 140 mA ですが、それまでの電流は大きくなります。
でも、電流を一定にする意味はないのです。バッテリーの充電電流を1/20C 以下にすればよいのです。それに、低い電圧のときに電流を大きくできるなら、バッテリーの充電時間を短縮できます。細かいことを言えば、最低電圧の 16.8 V では 265 mA ですから1/20C をちょっと上回っていますが、そこまで電圧を下げることはめったにないでしょう。
以上の顛末で、裏パネルに抵抗を取り付けました。
なんで、こんな簡単な方法をいままで気づかなかったのだろう。毎度のことですが、回り道のくり返しです。