ずっと、こうやってきました。進歩のない方法論です。ご笑覧ください(笑)
1.聞いて判断する
当たり前のことだと思うのですが、音は聞いて判断するしかありません。頭の中で考えて良し悪しを判断することはできないと考えます。
ところが、物理特性を信奉して聴感を軽視する判断も見受けられます。たとえば,ひずみ率を一桁下げる回路ができたとします。特性が向上したからそれでよし、との判断です。
しかし、ひずみを一桁下げたアンプと一桁下げてないアンプを比較試聴しなければ、音がどう変化したかは分かりません。試聴して初めて、その一桁の違いがどのような聴感上の違いになって聞こえるのかを語れます。
さらに酷いのとなると、音を聞かないで“こっちの方が良いに違いない”と考えたから、それを結論としている(としか考えられない)見解も少なくありません。どちらが良いかと考えることは重要です。でも、そこで、悪いと考えたものと比較試聴することが重要と経験しています。
私でも“こうすれば良くなるだろう”と考えついたことはいろいろとあります。ところが、私の経験では、10のうち良くなったのは2か3。たとえばプラスマイナス独立電源トランスのブリッジ整流回路のように、良くなると考えた方が悪かった経験も同じくらいの割合であります。さらにいえば、考えたけれども違いが分からなかったのが、残りの5か6です。
アンプに限らずオーディオ作りにおいて、聞いて判断することはもっとも重要です。まずは製作記を、できるだけそっくりにコピーして作ってください。そしてその音を聞いた上で、オペアンプを交換する、その他の考えついた方法を実施して、比較試聴してください。そこで私と異なる判断となれば、それはあなたの判断が正しいのであって、私の判断はまちがいなのです。あるいは、差が聞こえないこともあると思います。その時は、私のどうでも良いこだわりは、無視されればよいのです。
比較試聴すること。そして聞いて良い方を探すこと。これが、音作りの最初の第一歩であって、そして最後の第一歩です。
2.つきまとう音を探す
試聴時には、それぞれの装置やパーツで、同じ種類の音がつきまとっていないかを探します。たとえばギターでもコントラバスでもチェロでもピアノでも、同じ帯域に特徴的な音が聞こえることがあります。ヴォーカルにもビオラにもパーカッションにも拍手にも、同じような響きが聞こえることがあります。いろいろなソースで同じような音がつきまとっていたら、それは装置やパーツの固有音です。どんな装置やパーツにも必ず固有音はあります、パーツの固有音がどれであるかを注意して聞きます。
“何が録音されているかわからない市販ソースでは音質比較できない”などと言うヒトもいますが、どんなに高価なスピーカやアンプでも、生の音にはない再生装置の固有音があります。何が録音されているかわからないソースのどれを聞いても、同じ固有音が聞こえます。その固有音の発生する箇所を探します。
パーツのうち、固有音がもっとも耳につかないモノを選びます。特徴的な音がしゃしゃり出るパーツは、必ず飽きがきます。パーツだけではありません。回路も同じです。それぞれに固有の音があります。その中でもっとも嫌な音のしない回路を選び出します。
その作業の繰り返しが、私にとっての音作りです。辛気くさい作業だと自分でも思います。ですが、気になる音があると、聞くのがイヤになってしまいます。つきまとう音を取り除けば除くほど、音楽に浸れます。
3.理想イメージを持つ
私にとっての理想は、コンサートホールと錯覚させられるような音です。目を閉じてオーケストラやピアノやバイオリンの生の音と錯覚させられるような再生音が目標です。残念ながら、まだまだ遠くおよびません。おそらくは、死ぬまで到達できないでしょう。
生の音には再生装置の音はありません。楽器の音やホールの音はあっても、スピーカの音やアンプの音はありません。ですから、それらを消し去りたい。その音が私の理想です。
理想の音に向かって、オーディオの泥沼への第一歩を踏み入れましょう。