ロータリスイッチをリモコンで回す!
ロータリスイッチ・リモコン化ユニット SK-RSW1
20年来の宿願
20年来の宿願が、やっとできあがりました。ロータリスイッチ・リモコン化ユニットをご紹介します(開発の途中経過および動作(動画)はこちらのブログで)
リモコン化ユニット
マイクロサーボには、秋月電子扱いのFEETECH FT90B (M-14693)を使用します(写真A:写真にはTower Pro SG-90 も写っていますが、こちらはなぜだか、最新の基板では動かなくなってしまいました)。他にも似たサーボがありますが、SG92Rは電流消費が大きく、FS90はトルク不足で動きませんでした。
写真A マイクロサーボ
サーボを使うときには軸に付属のホーンを差し込んで、ロッドや糸で対象物と結びます。軸にはプラスチック製のギヤが付いてはいますが、このギヤはホーンを固定するためのもので,そこから回転力を取り出そうと考えられていないようです。そもそもギヤが規格品ではなく、他のギヤと組み合わせられません。円盤状のホーンをロータリスイッチの軸と連結する部品も作りましたが、工作が面倒です。いろいろと試しましたが、最終的に軸継ぎ手(カップリング)を使うことにしました。
カップリングは、モータなどの駆動軸と従動軸をつなぐ機械要素部品です。ところがサーボ側は、軸とはよべないプラスチックのギヤです。そのギヤ外径も中途半端な寸法で、カップリングには合いません。それでも、無理矢理締め付けてやれば回転を伝達できるかもしれません。ふつうのカップリングでは、軸心がズレるために回転に伴って円運動が生じてロータリスイッチを回せませんが、フレキシブルカップリングならうまく動きました。
鍋屋バイテック(NBK)カプリコンオルダムタイプMOR-15-5-6は、軸をつかむハブとハブの間に樹脂製のスペーサを挟み込んだ構造です。軸と軸の中心のズレ(ミスアライメント)を、ハブとスペーサのスリップによって吸収します。異なった軸直径に対応する多くのサイズが用意されていますが、サーボのギヤ外径は4.8 mmくらいですので5 mmの軸穴に、ロータリスイッチの6 mm軸をつなぐサイズを用いました。
取付プレート
サーボとロータリスイッチ、フレキシブルカップリングと取付プレートを写真Bに示します。取付プレートは3 mm厚の真鍮板で作りましたが、もちろんアルミでもOKです。フレキシブルカップリングを使うとしても、サーボ軸とスイッチ軸の中心がズレないようにします。ズレが大きくなると、それだけ回すのに余計な力を要すため、トルクの小さなマイクロサーボでは回らなくなってしまいます。
写真B サーボ、フレキシブルカップリング、セイデン SD-32NEG、取付プレート
取付プレート加工図を第1図に示します。プレートの連結には29 mmのスペーサ(廣杉計器 BSB-329E)を用います。スペーサは、セイデンSD-32の軸にカップリングを挿入したときにぴったりとなる長さです。ですから、使用するロータリスイッチの軸が14 mmよりも長いものなら、その分、スペーサも長くしないと入らなくなります。一方、カップリングを浮かせて取り付けるなら、スペーサの長さは +3 mmくらいまで使えます。もちろん、スペーサは、複数本でつないでもOKです。
第1図 取付プレート加工
取り付けプレートは8 mm角の垂直取り付けブロック(秋月電子CB3-8)でシャーシに固定します。ブロックの片方の溝を3 mmのドリルで拡張して、シャーシの上から取り付けられるように、そのときにドライバで回せるように、上側のスペーサの配置はプレート中心に寄せています(写真C)。
写真C ロータリスイッチ・リモコンとサーボを組み立てたところ
電源
マイクロサーボは5 Vくらいの電源電圧で動きます。ところが、けっこうな大食いで、動作時には1 Aを超える電流を必要とします。これには困りました。EVR用のデジタル電源ではとても足りません。かといって、スイッチを切り替えるその瞬間のためだけに、大きな電源を用意したくはありません。
とりあえず、SKEVR_VDDボードの出力側に15000μFを入れてみましたが、その程度では、ガクンと電圧が下がってサーボは動きません。バッテリーを積むことも考えましたが、ニッケル水素やリチウムイオンは充電回路がやっかいです。
いい方法がないかと探したら秋月電子に、直列抵抗(ESR)の小さな電気二重層キャパシタ(EDLC)があるではないですか。5.4 V 1.5 F。マイクロではありません。ファラド!SKEVR_VDDの +5 V出力に、逆流防止用にショットキーバリアダイオードを入れてEDLCをつないで SK_RSW1に供給すると、ちょっと電圧は下がりますが、動きます。
ただし、1.5 Fともなりますと、トヨデンHP510を載せたSKEVR_VDD基板では、充電に40秒くらいかかります。ですので、パワーオンしてすぐには切り替えられません。
これを回避する奥の手は、次の製作例でご紹介しましょう。写真Dにロータリスイッチ・リモコン化ユニットSK-RSW1とロータリスイッチを示します。
写真D ロータリスイッチ・リモコン化ユニットSK-RSW1と
ロータリスイッチを取付プレートに組んだところ
サーボの回転角調整
さて、「これで完成」となるはずでした。が、試すと、サーボのバラツキがけっこう大きい。サーボは50 Hzのパルス波の、パルス幅を変えてコントロールするのですが、同じパルス幅としても、ものによって回転角が異なります。ですので、回したときに30°のロックに入らないことがあります(写真E)。
まあ、お安いパーツですからバラツキなど考慮されていないのでしょう。
写真E 左:ロック位置からズレている。右:ピタリと収まっている
ですので、使う側で回転角を微調整できるようにしました。SK-RSW1コントローラのディップスイッチで初期設定モードに設定し、タクトスイッチを押して、軸の回転角を微調整します(写真E)。初期設定モードを終わる時点で、調整した角度を記憶するようプログラムしましたので、以後はピタリと収まります。
ロータリスイッチ切り替え範囲
ロータリスイッチのポジションは、LEDにて表示します。切り替え角30°タイプのロータリスイッチでは1段あたり2回路6接点になりますが、6入力を切り替えることはないと“見切って”表示用LEDを5個並べました。
それでも、5入力を切り替えとするには、リアパネルにRCAジャックを5ペアも並べなければなりません。4入力以下に対応できれば便利です。
そこで、ロータリスイッチ切り替え範囲をソフトウエア的に設定できるようにしました。回転角調整と同様に初期設定モードとして、タクトスイッチによって操作範囲を設定します。パワーオン時に1秒間、2~5回路の切り替え範囲のLEDをすべて点灯して、設定状態がわかるようにしています。